「久しぶりに実家へ帰ると、階段をゆっくり上っていた」 「玄関や浴室の段差が、以前より気になるようになった」 「エアコンを使わずに我慢しているみたい……」
親が70代を迎えると、これまで当たり前に暮らしてきた家の中でも、 少しずつ不便や危険が増えていくことがあります。
しかし、長年住み慣れた本人にとっては、 「まだ困っていない」「今まで大丈夫だったから問題ない」 と感じていることも少なくありません。
だからこそ、お盆やお正月、連休などで実家に帰ったときは、 親の様子だけでなく、家の中や家のまわりにも目を向けてみましょう。
この記事では、これからも住み慣れた家で安心して暮らすために、 実家で確認しておきたい20のチェックポイントをまとめました。
大掛かりなリフォームを前提にした記事ではありません
家具の配置を変える、足元灯を取り付ける、使っていない物を片付けるなど、 今すぐ始められる対策もあります。親を注意するのではなく、 一緒に暮らしやすさを確認する気持ちで進めてみましょう。
家の中で確認したい安全・暮らしのチェックポイント
01 玄関の段差は負担になっていませんか?
玄関は毎日使う場所ですが、住まいの中でもつまずきやすい場所の一つです。 若い頃は気にならなかった段差でも、足腰の力が弱くなると、 上り下りが大きな負担になることがあります。
玄関で確認したいこと
- 上がり框の段差が高すぎないか
- 壁や下駄箱に手をついて上がっていないか
- 靴を履くための椅子やベンチがあるか
- 使いやすい位置に手すりがあるか
- 靴や荷物が通路に出たままになっていないか
- 玄関マットがずれたり、めくれたりしていないか
壁や下駄箱につかまりながら靴を履いている場合は、 椅子や手すりが必要になっているサインかもしれません。 家の中へ上がる動作だけでなく、外へ出るときの様子も確認しましょう。
02 廊下は夜でも安全に歩けますか?
昼間は問題なく歩ける廊下でも、夜になると足元が見えにくくなります。 特に寝室からトイレまでの動線は、暗さや障害物がないか確認したい場所です。
廊下で確認したいこと
- 夜間でも足元が見える明るさがあるか
- 人感センサー付きの足元灯があるか
- カーペットや敷物の端がめくれていないか
- 新聞、段ボール、荷物が通路に置かれていないか
- 廊下に手すりが必要ではないか
- 寝室からトイレまでの距離が遠すぎないか
帰省したときは、できれば夜の状態も確認してみましょう。 実際に寝室からトイレまで歩いてみると、昼間には気付かなかった暗さや危険が見つかることがあります。
03 階段は安心して上り下りできますか?
階段は、住まいの中でも特に注意したい場所です。 上り下りができていても、手すりにつかまる時間が長くなったり、 一段ずつ慎重に下りたりしている場合は、以前より負担が増えている可能性があります。
階段で確認したいこと
- 使いやすい側に手すりがあるか
- 手すりが途中で途切れていないか
- 踏み板が滑りやすくなっていないか
- 階段全体が十分に明るいか
- 段の境目が見えやすいか
- 洗濯物や荷物を持って移動していないか
2階を使う機会が減っている場合は、無理に上り下りを続けるのではなく、 寝室や物干し場所を1階へ移せないか検討することも大切です。
04 トイレは立ち座りしやすいですか?
年齢を重ねると、便座から立ち上がる動作が負担になることがあります。 夜間に利用する回数が増えることもあるため、手すりや照明、ドアの開けやすさも確認しましょう。
トイレで確認したいこと
- 立ち座りの際につかまる場所があるか
- 便座の高さが低すぎないか
- 床が滑りやすくなっていないか
- 夜でも照明をすぐにつけられるか
- ドアが重くなったり、開けにくくなったりしていないか
- 和式トイレを無理に使い続けていないか
トイレ内で体調を崩した場合、内開きのドアでは外から開けにくくなることがあります。 引き戸への変更やドアの開き方も、将来的な安全性を考える際の確認ポイントです。
05 浴室は滑りやすく、寒くなっていませんか?
浴室は床が濡れやすく、浴槽をまたぐ動作も必要になるため、 特に注意したい場所です。 冬場は浴室だけでなく、脱衣所の寒さにも目を向けましょう。
浴室で確認したいこと
- 浴槽のまたぎが高すぎないか
- 浴槽へ出入りする場所に手すりがあるか
- 濡れた床が滑りやすくないか
- 浴室や脱衣所が極端に寒くないか
- 洗い場で安定して座れる椅子があるか
- 出入口に大きな段差がないか
浴槽の縁や水栓につかまって出入りしている場合は、 身体への負担が大きくなっている可能性があります。 手すりの設置や滑りにくい床への変更など、小さな改善から検討できます。
06 キッチンの火元や調理動線は安全ですか?
料理好きほど、長年の習慣で以前と同じ使い方を続けていることがあります。 火の消し忘れだけでなく、高い場所の収納や重い調理器具の出し入れも確認しましょう。
キッチンで確認したいこと
- コンロの火を消し忘れることがないか
- ガスコンロの安全機能が使える状態か
- よく使う物が高い棚に置かれていないか
- 踏み台を使って物を取っていないか
- 床に水や油が飛び、滑りやすくなっていないか
- 重い鍋や食器の出し入れが負担になっていないか
火の扱いが心配な場合は、安全機能付きのコンロやIHクッキングヒーターを検討する方法もあります。 ただし、使い慣れない設備へ急に交換すると戸惑うこともあるため、 本人の希望や使いやすさを確認しながら進めましょう。
07 リビングの動線に障害物はありませんか?
リビングは長い時間を過ごす場所です。 テーブル、座椅子、電気コード、新聞、衣類などが増えると、慣れていても移動しにくい空間になっていることがあります。
リビングで確認したいこと
- 歩く場所に電気コードが横切っていないか
- 座椅子やクッションにつまずく心配がないか
- 立ち上がりやすい椅子を使っているか
- 床に新聞や衣類が置かれていないか
- 家具の間が狭くなっていないか
- 日常的に使う物が無理なく取れる位置にあるか
深く沈み込むソファや低い座椅子は、立ち上がりにくくなることがあります。 本人が手をついて勢いをつけて立っている場合は、椅子の高さを見直してみましょう。
08 寝室からトイレまで無理なく移動できますか?
寝室が2階にある、トイレまで遠い、途中に段差があるといった場合は、 夜間の移動が負担になっている可能性があります。
寝室で確認したいこと
- 寝室からトイレまでの距離が遠すぎないか
- 夜間の通路に照明があるか
- 布団から起き上がるのが負担になっていないか
- ベッドの高さが合っているか
- 枕元に照明や連絡手段があるか
- 冬や夏に室温が極端になっていないか
布団からの立ち上がりが大変になってきた場合は、 身体に合う高さのベッドへ変更することで負担を減らせることがあります。
09 エアコンを我慢せずに使えていますか?
「電気代がもったいない」「風が苦手」といった理由で、 暑い日や寒い日でもエアコンを控えている方がいます。 エアコンが設置されているだけでなく、実際に使用できているか確認しましょう。
エアコンで確認したいこと
- 暑い日でもエアコンを使わずに我慢していないか
- リモコンの文字や操作が分かりにくくないか
- 冷暖房の効きが悪くなっていないか
- フィルターにほこりがたまっていないか
- 寝室にも冷暖房設備があるか
- 古いエアコンから異音や異臭がしていないか
リモコンが複雑で使いにくい場合は、よく使うボタンに印を付けるなど、 簡単な工夫から始めることもできます。
10 照明は十分に明るく、交換しやすいですか?
年齢を重ねると、以前と同じ照明でも暗く感じることがあります。 特に玄関、廊下、階段、トイレ、洗面所などは、 足元や段差が見える明るさを確保したい場所です。
照明で確認したいこと
- 部屋や廊下が暗く感じないか
- 電球が切れたままになっていないか
- 高い場所の電球交換を本人がしていないか
- スイッチの位置が分かりやすいか
- 人感センサー照明が役立つ場所はないか
- 階段や玄関の段差が見えやすいか
高い脚立に乗って電球を交換している場合は、転倒につながるおそれがあります。 長寿命のLED照明や、手の届きやすい設備への変更も検討しましょう。
11 コンセントや延長コードに無理はありませんか?
古い家ではコンセントの数が少なく、延長コードや電源タップを重ねて使っている場合があります。 配線が足元を横切っていると、つまずきの原因にもなります。
電気配線で確認したいこと
- 電源タップへ多くの機器をつないでいないか
- 延長コードが歩く場所を横切っていないか
- プラグやコンセントが熱くなっていないか
- コードが家具の下で傷んでいないか
- コンセントまわりにほこりがたまっていないか
- 古い電気製品を長く使い続けていないか
焦げたようなにおい、変色、異常な発熱がある場合は、使用を続けず、 電気工事店や専門業者へ確認を依頼しましょう。
12 火災や災害への備えはできていますか?
災害対策は、備蓄品をそろえるだけではありません。 避難経路、連絡先、家具の位置、住宅用火災警報器なども確認しておきましょう。
防災で確認したいこと
- 住宅用火災警報器が設置されているか
- 警報器の作動確認をしているか
- 消火器の場所と使い方が分かるか
- 玄関や勝手口までの避難経路が確保されているか
- 非常用品がすぐに持ち出せる場所にあるか
- 家族の連絡先を紙でも保管しているか
避難場所や連絡方法について、家族で一度話しておくだけでも安心につながります。 スマートフォンだけでなく、連絡先を紙へ書いて置いておくことも大切です。
家の外まわり・住宅設備で確認したいこと
13 玄関までのアプローチは歩きやすいですか?
家の中だけでなく、門から玄関までの通路にも危険が隠れています。 飛び石、砂利、傾斜、コケ、割れたタイルなどがないか確認しましょう。
玄関まわりで確認したいこと
- 通路に大きな段差や傾斜がないか
- 雨の日にタイルや石が滑りやすくないか
- 夜間に足元を照らす照明があるか
- 門扉や玄関ドアが重くなっていないか
- 手すりが必要な場所はないか
- 郵便物を取りに行く動線が安全か
14 庭や植木の管理が負担になっていませんか?
庭仕事が好きでも、草取りや剪定、落ち葉掃除が少しずつ負担になることがあります。 脚立を使う作業や、暑い時期の長時間作業を無理に続けていないか確認しましょう。
庭で確認したいこと
- 脚立に乗って剪定していないか
- 庭木が道路や隣家へ越境していないか
- 雑草や落ち葉で通路が滑りやすくなっていないか
- 庭石やホースにつまずく心配がないか
- 夏場に長時間の作業をしていないか
- 管理する範囲を減らせないか
すべてを以前と同じ状態で維持する必要はありません。 植木の本数を減らす、防草対策をするなど、 管理しやすい庭へ少しずつ変えていく方法もあります。
15 屋根・外壁・雨どいに傷みはありませんか?
屋根や雨どいを自分で確認しようとして、 はしごや脚立へ上るのは危険です。 地上から見える範囲で異常がないか確認し、気になる場合は専門業者へ相談しましょう。
外まわりで確認したいこと
- 雨どいが外れたり、傾いたりしていないか
- 雨の日に雨どいから水があふれていないか
- 外壁に大きなひび割れがないか
- 軒天や外壁に雨染みがないか
- 屋根材が落ちてきた形跡がないか
- 天井や壁に新しい染みができていないか
屋根へ上って確認しないでください
本人はもちろん、家族が慣れない状態で屋根や高い場所へ上るのも危険です。 地上から分からない場合は、無理をせず専門業者へ点検を依頼しましょう。
16 給湯器や住宅設備は古くなっていませんか?
給湯器、トイレ、エアコン、換気扇などは、 ある日突然不具合が起こることがあります。 使用年数が分からない設備は、型番や設置時期を確認しておきましょう。
住宅設備で確認したいこと
- 給湯器から異音や異臭がしていないか
- お湯の温度が安定しているか
- 設備の設置時期を家族が把握しているか
- 取扱説明書や保証書が保管されているか
- 故障したときの連絡先が分かるか
- 水漏れや排水の流れに異常がないか
故障してから慌てないためにも、設備の年数や連絡先を家族で共有しておくと安心です。
17 インターホンや防犯設備は使いやすいですか?
訪問販売や不審な電話に備えるためにも、 来訪者を玄関へ出る前に確認できる環境が大切です。
防犯面で確認したいこと
- 相手の顔が見えるインターホンがあるか
- インターホンの音が聞こえているか
- 玄関や勝手口の鍵がかかりにくくなっていないか
- 知らない来訪者へすぐ玄関を開けていないか
- 家の外から室内が見えすぎていないか
- 防犯について家族でルールを決めているか
18 家具の転倒や落下への備えはありますか?
背の高い家具や重い物が、寝る場所や普段座る場所の近くにないか確認しましょう。 地震だけでなく、収納物を取る際の落下にも注意が必要です。
家具で確認したいこと
- 背の高い家具が固定されているか
- 寝る場所の近くに倒れそうな家具がないか
- 重い物が高い棚に置かれていないか
- 食器棚の扉が開きやすくなっていないか
- 家具の上に重い物を置いていないか
- 避難経路を家具がふさぐ心配がないか
19 収納の出し入れが負担になっていませんか?
押入れの上段、吊戸棚、床下収納などは、 年齢を重ねると使いにくくなることがあります。 よく使う物を無理なく取れる位置へ移しましょう。
収納で確認したいこと
- 踏み台や脚立を日常的に使っていないか
- 重い物を高い場所へ収納していないか
- 奥に物を詰め込みすぎていないか
- 開けにくい扉や引き出しがないか
- よく使う物が腰から目線の高さにあるか
- 長年使っていない物が通路を狭くしていないか
片付けを急に進めると、「勝手に捨てられた」と感じることがあります。 必要・不要を家族だけで決めず、本人の気持ちを確認しながら少しずつ進めましょう。
20 住まいの将来について家族で話していますか?
家の危険箇所を確認することと同じくらい、 親がこれからどのように暮らしたいと考えているかを聞くことも大切です。
家族で話しておきたいこと
- これからも現在の家で暮らしたいか
- 2階を今後も使う予定があるか
- 家の中で不便に感じている場所はないか
- 困ったときに連絡する相手は決まっているか
- 家や設備の修理先を家族が把握しているか
- 将来の介護や住まいについて希望があるか
「危ないから直した方がいい」と一方的に伝えると、責められているように感じることがあります。
「最近、家の中で使いにくくなった場所はない?」
「これからも安心して暮らせるように一緒に考えよう」
このように、本人の希望を聞くところから始めてみましょう。
実家の住まいセルフチェックリスト
帰省した際に、気になる項目へチェックを入れてみましょう。
玄関の段差で壁や下駄箱につかまっている
廊下や階段が暗い
夜間のトイレ移動が心配
浴室や脱衣所が寒い
浴槽の出入りが大変そう
火の消し忘れが心配
床にコードや荷物が多い
布団からの起き上がりが大変そう
暑くてもエアコンを使わない
高い場所の電球を本人が交換している
延長コードや電源タップが多い
火災警報器の状態を確認していない
玄関までの通路に段差や滑りやすい場所がある
脚立に乗って庭木を剪定している
雨どいや外壁に傷みがある
給湯器や設備の使用年数が分からない
来訪者を確認せず玄関を開けている
背の高い家具が固定されていない
踏み台を使って収納物を取っている
住まいの将来について話したことがない
すべてを一度に直さなくても大丈夫です
20項目を確認すると、気になる場所がいくつも見つかるかもしれません。 しかし、家全体を一度にリフォームする必要はありません。
まずは、次の順番で優先順位を考えてみましょう。
- 転倒や火災など、事故につながる可能性がある場所
- 親が毎日使い、不便を感じている場所
- 故障すると生活に大きな影響が出る住宅設備
- 今後の身体状況を考えて早めに備えたい場所
手すりを1本設置する、家具を移動する、足元灯を付けるなど、 小さな改善でも暮らしやすさが変わることがあります。
実家・住まいに関するよくある質問
本人が「リフォームは必要ない」と言う場合はどうすればよいですか?
最初からリフォームを勧めるのではなく、 「最近、使いにくい場所はない?」と困りごとを聞くところから始めましょう。 家族が危険だと思っている場所と、本人が不便に感じている場所が異なることもあります。 まずは家具の移動や照明の追加など、小さな対策から試す方法もあります。
親が元気なうちから住まいを確認する必要がありますか?
元気なうちだからこそ、本人の希望を聞きながら対策を考えやすくなります。 ケガや体調の変化が起きてから急いで工事を進めるよりも、 将来を見据えて少しずつ備えておく方が、家族も落ち着いて判断できます。
実家で最初に確認した方がよい場所はどこですか?
玄関、廊下、階段、トイレ、浴室など、 毎日使う場所や転倒につながりやすい場所から確認しましょう。 また、夏はエアコン、冬は浴室や脱衣所の寒さなど、 季節に応じた確認も大切です。
手すり1本の設置でもリフォーム会社へ相談できますか?
会社によって対応範囲は異なりますが、 手すりの設置や段差の改善など、小さな住宅改修に対応している会社もあります。 手すりは取り付ける位置や下地の状態が重要になるため、 安全に使用できるよう専門業者へ相談することをおすすめします。
介護が始まっていなくても相談してよいですか?
介護が必要になる前でも相談できます。 現在の暮らし方や将来の希望を確認しながら、 今すぐ必要な工事と、将来検討すればよい工事を分けて考えることが大切です。
まとめ|実家の確認は、親の暮らしを知るきっかけ
親が70代になったからといって、すぐに家全体をリフォームする必要はありません。
大切なのは、親が普段どのように家の中を移動し、 どこに不便や負担を感じているのかを家族が知ることです。
玄関で壁につかまっている、夜の廊下が暗い、 浴槽の出入りが大変そう、暑くてもエアコンを使っていないなど、 帰省した際の何気ない様子から気付けることがあります。
まずは、今すぐできる片付けや家具の移動から始めて、 必要に応じて手すりの設置、段差の改善、浴室やトイレの改修などを検討しましょう。
親を心配するあまり、一方的に工事を進めるのではなく、 「これからも安心して暮らすために、一緒に考えよう」 と話し合うことが、住まいを見直す第一歩です。